忘却曲線について

TLTから学ぶ記憶のメカニズムと人間の不思議

忘却曲線について

何かを暗記しよう、覚えようと思っているのであれば、この忘却曲線(ぼうきゃくきょくせん)という物を理解していた方が、その記憶効率は上がるかも知れません。これは、記憶の中でも特に中期記憶や長期記憶の忘却を表す曲線のことで、心理学者のヘルマン・エビングハウスによって示された物です。元々の実験は、自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, ...etc)を記憶して、その再生率を調べるというもので、その結果としてこの忘却曲線が導き出されました。それは結果としては以下のようなものになりました。

  • 20分後には、節約率が58%でした。
  • 1時間後には、節約率が44%でした。
  • 1日後には、節約率が26%でした。
  • 1週間後には、節約率が23%でした。
  • 1ヶ月後には、節約率が21%でした。

節約率ってなんだ?

上の結果はそれぞれの経過時間によって現れる節約率を表しているものです。そもそも節約率がなんだかわからない人もいるかもしれませんが、これは一度記憶した詳細を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間や回数をどれくらい節約できたのかを表す比率で、大まかな式で表すと以下のような算出方法になります。

(節約率)=(節約された時間または回数)÷(最初に要した時間または回数)

(節約された時間または回数)=(最初に要した時間または回数)-(覚え直すのに要した時間または回数)

たとえば、最初にgorという文字列を覚えるのに10分を要し、20分後に覚え直すと約4分を要したとした場合だと、覚え直すのに最初と比べ、6分節約したという事になります。これは計算するならば、節約率は 6(節約された時間)÷10(最初に要した時間)=0.6= 60% となるというわけです。

また、最初にrevを覚えるのに40回の書き取り行い、1時間後に覚え直すのに22回要した場合だと、最初のケースと比べて、18回分節約したことになります。すると節約率は 18(節約された回数)÷40(最初に要した回数)=0.45= 45% となります。

注意すべき点は、このグラフは節約率を表しているだけに過ぎず、記憶量を表しているわけではないということです。つまり、20個の単語を覚え、24時が経過すれば、そのうちの74%に相当する15個の単語を忘れている、というわけではないということです。

これによってわかること

この結果からわかることですが、実際に記憶をしてみてから、1日の間には急激な忘却が起こるものの、その後の忘却は緩やかに起こっているということが一つの事実としてあります。もちろんこの実験に用いられたのは相互に関連を持たない無意味な音節でありますので、学問等の体系的な知識では、より緩やかに忘却が起こると考えられています。さらに、再認可能な「忘却」と「完全忘却」を区別していないという問題も確かにあるのですが、ともかく、学習に力をいれても一日の間に大きな忘却が起こってしまうので、復習に力を入れた方が、記憶が定着するという事になります。

これは最初に説明したTLTの方式が、まさに忘却の確認→復習→訓練→忘却の確認→復習→訓練というループによって記憶を習慣化していくというところに主眼を置いている訳ですが、このように忘却曲線に照らし合わせると、一日立ってから、再び再復習、訓練を行った方が、むやみに学習や暗記をやろうとするよりも記憶の定着という物においては優位であるという事がわかるということなのです。これを間隔反復といい、その学習内容から復習までの間隔を延ばしてゆくことによって心理学的な間隔効果を利用して効果を上げられるという事なのです。

間隔反復

先ほど紹介した間隔反復ですが、これは大まかに言うと、先ほど説明した通り、その学習の復習までの間隔を延ばしてゆくことにより、心理学の間隔効果を利用して効果をあげる学習技術の事をいうのですが、特に、様々な分野で使えるテクニックでありながらも、特にこれは、学習者が非常に多くの事柄を長期に記憶しなければならない分野に適用されることが多くあります。特に第二言語習得の分野での語彙の習得には、この手法を用いている事が多く、語学のような、クラスの単語数が膨大であるものはこの手法を用いて記憶する事がベストだと言えるでしょう。

間隔反復の実用

特にこの間隔反復を利用して、学習効果を上げるという概念を提唱した初期のものの一つは、C. A. Maceが1932年に書いた”Psychology of Study”があります。

1939年には、 米国のH. F. Spitzerがアイオワ州の6年生をターゲットに、科学知識の習得に間隔反復の効果を実験しており、Spitzerの実験は、3600人のアイオワ州の生徒に対して、間隔反復が効果があることを実証しました。これらの初期の成果は何故か注目されず、 1960年代に、Melton and Landauer & Bjork,等の認知心理学者が、反復の機会操作により記憶喚起を改善する試みをするまで、目立った動きは無かったのでした。

同時期に、”Pimsleur language courses”が、間隔反復の語学学習への実際的応用の草分けとなってました。また、1973年には、Sebastian Leitnerが、単語帳をベースとした汎用の間隔反復学習システムとして、"ライトナーシステム"を開発しました。

これは当時、間隔反復学習用に単語帳が用いられましたが、ただ、これを作るためには数千の単語カードが必要になるため、管理、処理が非常に大変な物でした。しかし、として実装されました。しかし、実用的な学習には数千の単語カードが必要であるため、管理、処理は労力を要しました。1980年代となって、パーソナルコンピュータの利用が広がると、間隔反復は、CALL(コンピュータ支援言語学習)ソフトウェアをベースとしたソリューションとして実現されるようになります。これらのソフトウェアの目標は、学習者のパフォーマンスに合わせて間隔反復を最適化することでした。 ユーザが所定の目標(例示すると、ある程度の期間に、教材の90%を正しく回答できます。)を達成できるように、ソフトウェアが反復間隔や学習量を調節するというものです。また、難しい内容については易しいものよりも頻繁に出題します。ここで、難しさとは、ユーザが正しい回答が出来たかどうかで判断します。

間隔反復学習ソフト

学習のための間隔反復ソフトウェアプログラム(SRS)のほとんどは、単語帳を用いる学習形態をモデルとしています。記憶する項目は、問題と回答のペアとして保存され、そのペアが学習される時、問題部分が画面に表示され、ユーザは回答を促されます。回答した後、ユーザは自ら回答を表示して、プログラムに問題の難易度を主観的に告げます。プログラムは、その間隔反復アルゴリズムによって、そのペアの次の学習時期を決定します。もし、このようなソフトウェアが無いと、ユーザは単語帳のスケジュール管理を手で行わなければならず、ライトナーシステムのような単純化したものを利用するしか方法はありませんでした。しかし、ソフトウェア制御の物であれば、

これらのソフトウェアの殆どには以下のような機能が追加されていることが多い:

  • 問題や回答に音声ファイルが利用でき、音声での単語、文章認識の訓練が可能。
  • 問題回答ペアの自動生成。
  • 追加情報の自動取得。例示すると、例文や辞書参照の自動化。
  • 間隔反復とソーシャルネットワーク、コミュニティー連携。例示すると、製作した単語帳の共有等。

☆実際のソフトウェア

  • Anki
  • Course Hero
  • eSpindle Learning 
  • Memrise
  • Mnemosyne
  • OpenCards
  • Skritter
  • SuperMemo
  • Duolingo